読書タイム
No.16
労働ビッグバン− これ以上、使い捨てにされていいのか

 書名 :労働ビッグバン−これ以上、使い捨てにされていいのか
著者 :牧野富夫[編著]、生熊茂実+今村幸次郎+藤田宏[著]
出版社:新日本出版社
発行日:<初版>2007年10月20日
価格 :1700円+消費税
頁数 :236頁


【内容紹介】
1980年代半ばから、労働者派遣法など、労働者の権利をきりくずし、 搾取を強化、格差をひろげるさまざまな法律改悪やイデオロギー攻撃が行われてきた。 90年代半ばまでの前史、現在までの第一期に引き続き、第二期の攻撃が始まろうとしている。 「ワークライフバランス」をかくれみのに、 ホワイトカラーエグゼンプションや首切り、労働条件の切り下げ自由化など、 さらなる労働条件の悪化や貧困、失業につながるとともに、労働基本権をも奪い去ろうというのだ。 その張本人は3つの勢力である:

  • 財界・大企業
  • 米財界をバックとしたアメリカ政府
  • 靖国派
それぞれの動機はやや原点が異なるものの、最終的な標的は同じである。
  • 首切り、労働条件引き下げの自由化
  • 有期雇用(派遣、請負)の拡大
  • 労働組合排除、労働基本権縮小・廃止
安倍内閣で第二期の皮切りとしてホワイトカラーエグゼンプションがはかられようとしたが、 労働者が「残業代0法案」であることを見抜き、いちはやく世論を喚起した結果、あきらめざるを得なくなった。 しかし、「骨太の方針2007」といったものでは前記のような標的を包み隠しておらず、 財界ブレーンも労働ビッグバンをあきらめたわけではないことを公言している。 まさに、たたかいはこれからなのである。

序章 「労働ビッグバンと貧困化」

労働ビッグバンの定義とワークライフバランスの原点、そして財界がかくれみのとして使う場合の裏の意味を摘発している。

第一章 労働者の生活と働き方の現状

ネットカフェ難民、フリーター・不安定雇用。TV番組でもたびたび取り上げられる、労働社会情勢を、 統計や各種調査結果の数字で明らかにし、おおもとの原因が労働者自らの選択ではなく、 労働法制の改悪によるものであることを如実に示す。

第二章 「労働ビッグバン」で何がおきるか

第一段が与えた影響の大きさ(労働者の被害、大企業の謳歌)と、 第二段にたくらまれている法制改悪の黒幕や彼らの主張を白日の下に引き出す。 すべての格差の存在は労働者保護の法制にあると決めつけ、 低い方に合わせることで格差を解消しようとする財界などの主張は怒りとともに哀れをもよおす。 そこまでしないと、もはや日本財界は生き残るすべを持っていないのだ。

第三章 労働者保護法の再生に向けて

これまで改悪される一方だった法律。ここで流れをせき止め、さらに押し返さねばならない。 直近でたくらまれている法改悪(労働者派遣法、労働契約法制、ホワイトカラーエグゼンプション、解雇金銭解決) について、影響の大きさや政治状況を示す。 また、労働法制の歴史や国際情勢にふれ、労働者保護法制を持つ国にすることがまっとうな国として あたり前の姿であることを強く主張する。

第四章 「労働ビッグバン」を阻止し、働くルールの確立を

今、日本では貧困増大、生活不安とともに、労働環境の悪化に身をつまされる人が増えている。 直接、間接に、これまでの労働ビッグバンの災禍に遭っている人は多いのだ。 それらの人々と団結し、世論を作り上げて「働くルール」を確立することは、 単に労働者の権利を守るだけでなく、企業活動も含めた社会の発展に寄与するということを 筋道を追って述べている。 また、運動の進め方について、労働組合や政党とともに、さまざまな階層や団体に働きかけ、 国民全体として世論を動かしていく必要性と、その動かし方も提起している。

終章 労働ビッグバンがもたらすもの

すでに、労働ビッグバン第一期を通過した現在、さまざまな変化がもたらされている。 雇用の安定とは職を失わないようつぎつぎに転職することである、というイデオロギー攻撃もその一つである。


【著者紹介】
牧野富夫(まきの・とみお)
1937年熊本県生まれ。 日本大学名誉教授、 労働運動総合研究所代表理事、 労働者教育協会理事

生熊茂実(いくま・しげみ)
1948年茨城県生まれ。 全国労働組合総連合(全労連)副議長、 全労連労働契約法制闘争本部長(全労連労働法制のページ)、 全日本金属情報機器労働組合(JMIU)中央執行委員長

藤田宏(ふじた・ひろし)
1947年北海道生まれ。 労働運動総合研究所理事

今村幸次郎(いまむら・こうじろう)
1960年東京都生まれ。 弁護士、自由法曹団事務局長
 

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