読書タイム
No.17
年収120万円時代
−生き抜くための知恵と工夫−

 書名 : 年収120万円時代
      生き抜くための知恵と工夫
著者 : 森永卓郎
出版社 : あ・うん
発行日: <第1刷>2007年3月1日
      <第6刷>2007年4月3日
価格 : 1400円+消費税
頁数 : 212頁


【はじめに】
「辞めるな!キケン!!」の著者である森永卓郎氏が、昨年春に「緊急版」として出版したのが本書です。
年収300万円であれば何とか生活できるけれど、120万円だと生命そのものが危険に晒されます。とこ
ろが非正社員では、そんな年収120万円未満の人が全体の4割を占めると言います。そしてその非正社員
の割合も年々急激に増加していて、今や全勤労者の1/3を超えています。しかも非正社員=若者と思った
ら大間違い。最も多いのは40代で、50代と合わせれば全体の45%を占めます。リストラされた中高年
は、非正社員として低賃金労働に就かざるを得ず、一気に貧困へと突入していく、そんな図式を”これでも
か”と見せてくれます。では、そんな時代を生き抜く知恵と工夫とは如何に・・・。

【内容構成】
第1章 ビンボー父さんはますますビンボーに − 「年収120万円の衝撃波」
第2章 国民不信列島ニッポン! − ゲート・シティとスラムの拡大 
第3章 仕組まれた大格差社会 − 始まった日本人貧民化計画
第4章 「安部総理、”財政破綻”は政府の宣伝ではありませんか?」
第5章 年収120万円時代を生き抜く必死の構え
第6章 最低年収で楽しく暮らすための「知恵と工夫」

【紹介文】
 はじめに後半の2章(第5,6章)について少し。
 第5章は資産運用の話、第6章は生活を切り詰める話で構成されています。つまり賃金以外の収入を増や
し、一方で支出を抑えましょうということなのですが、ここで書かれている生活は、あくまでも年収300
万円以上が想定されているようです。つまり著者は、「これから氷河期が来ます。今は普通の真冬ですが、
これからはもっとめちゃくちゃに寒くなるから、出来るだけ薄着をして寒さに強い体になっておきましょう。
もし可能なら蓄えもしておきましょう。」とでも言いたげです。でも、それで年収120万円時代を生き残
っていけるのかは定かではありません。むしろ、どんなに知恵を絞り工夫を重ねても生き残るのは困難だと、
暗に言っているかの様です。

 では、クロマニヨン人もびっくりの現代における”氷河期”は、如何にして生まれて来たのでしょうか?
それが書かれているのが、第3章と第4章です。キーワードは「新自由主義」。このアメリカ型資本主義と
も言われる強者の論理によって、富める者はより富み、貧しき者はより貧しく、格差はどんどん拡大して行
きます。やがては日本も、一部の大金持ちと圧倒的多数の貧乏人の国になり、貧乏人は大金持ちのために3
Kの低賃金労働に甘んじる、あるいは戦争にだって行く、そんな「命の格差」の際立つ社会になって行きそ
うです。

 さて、新自由主義の信奉者は、そんな世の中をウェルカムと考える非情な人種であり、金の亡者であり、
自分たちだけが幸せになれば良いというものすごくイヤな人たちなのだと著者は言います。そんなイヤな人
たちのルールに合わせて生きるよりも、もっと他の道があるとばかりに、第6章の生き方を提案しているわ
けですが、これでも年収120万円では生きられないとすると・・・。結局のところ、残された道は新自由
主義そのものを突き破る事しかないと言う事が、おのずと見えてきます。(著者はそこまで言っていません
が、そうはっきり言わないところが森永氏なりの処世術なのだろうと思います。)

 とはいえ、政治の世界はすぐには変わりませんから、長期的な視野に立った理想も、今を生き抜くしたた
かさも、どちらも我々には必要でしょう。後者について言えば、やはり会社に残る事が生き残る上で最善の
策であり基本だと思います。(対リストラの相談はリストラ110番までお願います。)


【著者紹介】
森永卓郎(もりなが・たくろう)
経済アナリスト
三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員
獨協大学経済学部教授
1957年生まれ。東京都出身。
(以上、本書より)
 

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