読書タイム
No.9
トヨタの正体

書名 :トヨタの正体
著者 :横田一(よこたはじめ)、佐高信(さたかまこと)
出版社:株式会社金曜日
発行日:<第1刷>2006年6月21日、<第3刷>2006年7月19日
価格 :1000円+消費税
頁数 :123頁

まずは著者である佐高信氏の紹介文を引用する。

「マスコミが書けないトヨタの手口を暴く
  「日本一の会社」トヨタのことは、残念ながら『週刊金曜日』しか書けない。
  新聞はもちろん、週刊誌でもテレビでも、トヨタに横を向かれたらおしまいである。
  利益は日本一であり、《財界総理》といわれる経団連会長も出していたトヨタの、
  この国の支配の手口と、支配の歴史、すなわちスキャンダルを含めた事件の歴史を、
  あますところなく描破したこの本は、怒りを忘れない日本人にとって必読であり、
  必携である。」

営業利益1兆円以上を誇るトヨタは、その優れた生産方式や社員のたゆまぬ改善努力によって、
日本一の企業に発展したと、一般に信じられているのでは無いだろうか。
だが本書は、巨大企業トヨタの知られざる闇の部分をあらわにする。
それは莫大な利益を上げる背景にある労働者へのしわ寄せであり、
自治体の予算をくいものにする姿であり、そして国政を通じた利益誘導である。

工場労働者(とりわけ近年では外国人労働者)は過酷な環境で働き、
労働者の安全対策はないがしろにされ、労災による死亡事故も起きている。
下請け企業は厳しいコスト削減要求にあい、長時間労働や精神疾患が蔓延すると言う。
一方、昨年の愛知万博をきっかけに、中部新国際空港や豊田市周辺の高速道路網が一気に建設され、
トヨタの工場から港までの”荷出し道路”が整備された。
その結果2005年度の愛知県の県債残高は3.7兆円にふくれあがったと言う。
自社内は徹底的なコストダウンを行うが、税金は使い放題。
他人に厳しく自分に甘い姿が浮かび上がる。

05年の衆議院議員選挙では、奥田元経団連会長の号令のもと、自民党の圧勝に貢献したと言う。
自社の対米事業を拡大するにあたり、自民党政権の方が都合が良かったためと見られている。
もともと自然人のみが有する選挙権を、法人であるトヨタが上位に君臨して支配する。
会社ぐるみ、グループぐるみの選挙活動は、民主主義の原点を踏みにじる行為であると言えそうだ。

すでにトヨタ生産方式(かんばん方式)は、NECグループ内においても導入されている。
トヨタ生産方式には、周期的に工場内を巡回し、かんばんと仕掛り品を持ち回る特徴的な職種がある。
彼らは「みずすまし」と呼ばれているが、この人間を昆虫呼ばわりした名称を、
NECグループにおいてもそのまま使用しているのは、
我々もまた、トヨタの利益に幻惑されて鈍感になったり、
畏れから無批判状態になっているからでは無いだろうか。
今一度、会社は何のために存在するのか、利益とは何だろうかと言ったテーマについて、
会社と自己との共生関係を離れた視点から考察する必要を感じる。

もの言う弱者がバッシングに遭う時代ではあるが、
強大な力を持つトヨタを正面から批判した本書が、多くの人に読まれる事を望みたい。

なお、本書の第8章では、トヨタの元町工場に勤める若月忠夫氏が関連会社の社員とともに、
06年1月に結成した第2労組「全トヨタ労働組合(ATU)」を紹介している。
企業に懐柔された御用組合とは違う、闘う労組の結成である。

 全トヨタ労働組合のブログはこちら → http://blog.goo.ne.jp/atunion/


【内容紹介】

<横田一著>
1.クルマ雑誌が書けないトヨタ車の評判
2.偽りのプリウス神話
3.マスコミと言う壊れた信号機
4.「小泉圧勝」劇をつくった奥田会長
5.税金を食いものにする政商
6.トヨタ生産方式で病む社員
7.外国人が支える企業城下町
8.誕生した闘う組合
9.豊田市がデトロイトを超える日

<佐高信著>
・トヨタと私の交わらない関係
・佐高信のトヨタが嫌う男たち対談
  鎌田慧   日の丸背負った三河の桃太郎
  三澤千代治 「トヨタは”人殺し”で儲ける会社だ」
  徳大寺有恒 トヨタを通して見える日本


【著者紹介】
横田一(よこたはじめ)
フリーリポーター
「漂流者たちの楽園」で、1990年ノンフィクション朝日ジャーナル大賞受賞後、
本格的なジャーナリズム活動に。
著書に『所沢ダイオキシン報道』『暴走を続ける公共事業』(緑風出版)など。

佐高信(さたかまこと)
評論家、株式会社金曜日代表取締役。
著書に『古賀政男の人生とメロディ』(朝日新聞社)、
『佐高信の丁々発止』(七つ森書館)など。
 

NEC労働者懇談会

前ページへ