疲弊する職場 NECは今  No.11

企業行動憲章に逆行  建前だけの”人権尊重”         2005.1.20
 

 NECは昨年四月に「NECグループ企業行動憲章」を制定しました。このなかで、次のような活動を重視しています。

 @人権尊重。あらゆる企業活動の場面において人権を尊重し、差別的取り扱い、児童労働、強制労働を認
めません。A従業員の尊重。従業員一人ひとりの個性を尊重します。また、能力を十分に発揮でき、生き生きと働ける環境を実現します--。

 対外的にはあたかも人権や従業員を重視しているかのように主張しています。しかし実際には、これまで連載でみてきたように、人権も尊重しなければ、従業員も尊重しておらず、利益第一主義で非人間的なやり方を続けています。

 「実際は憲章に逆行しているのではないか」と社員は口をそろえます。

 扶養給の見直し

 「社員のがんばりが反映される」として導入された営業利益に比例する業績連動の一時金方式。ところが今年度から最終損益も計算に入れる方式に改められ、本来なら年間五・二カ月の一時金が支給されるはずのところ、四・五カ月となりました。金額に換算すると年間十五〜二十五万円の減額となりました。

 NECは、このほかにも扶養給の見直しや、降格による賃金減額制度などが相次いで導入されました。

 扶養給の見直しとは、配偶者の扶養給をなくす代わりに、子どもが一人誕生するごとに五十五万円を支給するというもの。しかし、この金額は現行の配偶者の扶養給の二年分にすぎません。

 社員によると、配偶者の扶養給の廃止で、すべての年齢層で大幅減収になります。定年までの減額分累計でみると、三十歳で新たに子どもが二人生まれる場合、五百四十八万円も減ります。三十五歳(配偶者、子ども二人)で四百二十七万円、四十五歳(同上)で二百五十万円減ります。

 配偶者の扶養給の廃止理由について、会社側は「社会情勢の変化、男女均等処遇、公正処遇の観点から見直す必要がある」とし、こう強調しています。「賞与原資を増額して成果に応じた処遇を徹底すべきだと判断した」と。扶養給の原資を成果主義賃金の個人業績分に組み入れ、その分け前をめぐり社員の競争心をさらにかきたてようというのです。

 「会社や労組執行部は、これでより安心感や働きがいのもてる環境を整えることができるといっています。これほど社員の意識とかけ離れているいい分はありません。むしろ生活不安は増大し、将来の生活設計も立てられなくなります」と男性社員は憤ります。

 高まる不安と不満、その一方で長時間労働とストレスで心身を病む社員が増加しています。

 NECは昨年夏、東京・田町地区に「ヘルスケアルーム」を新設しました。休職者や病欠者の復職支援やストレスマネジメント強化のための研修・教育の活動に本格的に取り組むのが目的。全社、グループ全体あげての対策といいます。

 社員をないがしろ

 社内の医療相談室でうつ病の薬を週一回もらいながら働いている男性社員によると、いつも待合室には約二十人の社員がいます。

 「私の場合、発症は顧客とのトラブルが引き金になりました。新聞の切り抜きだけをさせられ、給料のもらい過ぎだ、といじめられている主任もいます。リストラと成果主義が社員をないがしろにする風潮を助長しているのです」と男性社員。続けていいいます。「従業員の尊重を公約しなが
ら逆のことをする企業に未来はあるのでしょうか」

                                                            (おわり)

 
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