電機労働者懇談会2000年春闘アンケート結果


大幅賃上げ・雇用確保で生活向上・経済再生

職場に溢れる要求、闘う力

 電機懇談会が毎年実施している、春闘アンケートの中間集計結果です。自由意見欄も多くの声が寄せられました、その中では、転籍などリストラ攻撃やサービス残業に対する怒り、一時金減額などによる生活費減少・大幅な賃上げ要求、闘わない労働組合への批判が目立ちました。

 

5万円以上の要求が最多の30%

 賃上げ要求額では30%の人が5万円以上の要求をすべきだと回答しています。これは長年続いた低い賃上げにより、生活が苦しくなっていることの反映です。また、仕事がきつくなっており、、現在自分がやっている仕事に比べても大幅な賃上げをしても当然だ、という主張でもあります。1%(連合ベア要求)2000円(電機連合ベア要求)などは、全く労働者の生活と要求を無視したものです。労働者の要求をそのまま会社に突きつけることが大切です。

14%が未払い残業アリ


 残業代を払わないのは、労働基準法違反の犯罪行為です
労働基準監督署への申告などにより是正させる運動も広がっています。また、裁量労働制では、「裁量手当」が実際の労働時間以下の場合も多く、チェックが必要です。


生活実態


ゆとりはわずか6%

 生活実感では、「かなり苦しい」と「やや苦しい」を合わせると約6割が現在の生活が苦しいと訴えています。

アンケートや職場討議で要求を決める72%
不満な場合は残業拒否やストライキで闘う66%

 闘い方について最も多くの声は、職場の意見を聞いてほしいということです。労組は組合員の生活より会社の業績・利益ばかり考えている、という指摘も少なくありません。賃金だけでなく、転籍問題なへの対応も含めて現在の労組への批判が厳しくなっています。ストライキを経験したことのない労働者が多数であるにもかかわらず、「回答に不満な時にはストで闘う」が66%になっており、職場には闘う力も決意もあることを示しています。

 

春闘評価


6割以上が不満

3人に2人が転籍などの不安を持つ

 今年の質問では、雇用不安について、具体的にたずねました。その結果、解雇・転籍・出向の不安なしに働いているという人は僅か30%と3人に1人にすぎないことがわかりました。しかも8%弱の人が解雇を、30%の人が転籍の不安を持っており、これでは落ち着いて仕事もできない状況です。解雇規制や転籍に歯止めをかけるなど、労組の取り組み強化が急がれています。

 仕事も内容では、「最近仕事がきつくなった」と答えた人が半数近くにのぼります。これは利益を上げるためののリストラ人員削減の過酷さと、不当性を示しています。必要な人員を確保させること、労働強化をあおる成果主義賃金などを、職場の声を聞いて見直すことが求められています。

 

賃金決定方式と評価

業績・成果重視が52% しかし「正しく評価されている」のは16%だけ

 賃金の決定方式については、「業績・成果を重視して決めるべき」という回答が52%となりました。特に40歳以下の年齢層では67%にも上がっています。逆に40歳以上では過半数の人が「生計費を重視して決めるべき」と答えています。業績・成果重視と回答した人に「正しく評価されていますか」とたずねたのに対して、「はい」という答えは16%です。評価制度など成果主義賃金は多くの矛盾を抱えています。
 今の賃金は、自分の働きに比べて非常に低いという認識が青年層には強くあります。それを賃金決定方式といういわば分配の問題にしていいのかどうか。大いに議論を深めたいものです。

 

男女差別

アンケート自由意見

★リストラ、人減らしによる安易な手法により、残された人間の仕事量が増加している。本当に必要な工数をきちんと見極め、人が必要な部分には、ちゃんと割り当ててほしい。仕事が多すぎる人と仕事がまったくない人との格差がはげしい。
 (NEC府中・20代後・男)

★最近不況とはいえ日本は世界の中でも金持ち国家である。これは、メーカが物を売って世界からお金を日本に持ってくるからである。しかし、当のメーカで働く人間はその恩恵に授かることなく、残業なしではゆとりのある生活は夢のまた夢である。一方、特に世界的に優れているわけでもない逆に劣っている銀行等の事務屋の社員は残業なしでも、十分高い給料をもらっており、メーカの社員と比べると、生活水準が明らかに高い。この点において、日本社会に根本的な矛盾があることを感じざるを得ない。
 (NEC府中・30代前・男)


★担当のくらべ役職者が異常に多い。(高級取が多い)。派閥があり、上司に気に入られると仕事ができなくても職場にいすわっており、本当に仕事のできる人が出向させられている。無能なトップ集団。(あなたがたは、あと数年で退職だが私はあと20年はつとめなければならない)
 (NEC相模原・30代後・男)

★職場ごとの出向が決定しており、出向のうちは良いが、そのまま移籍→首きりになるのではという不安がある。NECとはこの程度の会社だったのかと残念に思う。ご苦労さまです。
 (NEC府中・30代前・男)

★活気がない。経営陣はリストラ、賃金カット以外の具体的な改革ができないのかが問題では?
 (NEC三田・20代後・男)

★経営改革に伴い我が部はなくなります。10年やってきたものがゼロになるのは不安ですが、会社倒産までいかずに判断した変革には協力しなければならないと思っています。
 (NEC三田・30代前・男)

★発表はされたものの、まだ概要レベルで具体的な内容は知らされていないので困惑、不安を抱えながら仕事をしているのではないか
 (NEC三田・30代前・男)

★スタッフの成果と開発部門の成果での比較が必要と思う。又、成果重視として残業時間との両方で賃金を決めるべきと思う。
 (NEC三田・30代前・男)

★職場では危機感からピリピリムードで一生懸命働いています。組合はリストラやっているのか?もっと小さなスリム化して組合を目指すべき、そうすれば組合費も安くなるはずだ。
 (NEC三田・30代前・男)

★4月からの新体制により、今後自分たちはどうなるのか?志気が低下して不安が増しているのは歪めない。これを機に各職場でいい加減な勤務の仕方している人はリストラされて然るべきである。
 (NEC三田・30代前・女)

★退職金に少しばかりの加算金を上乗せし、希望退職者をつのっている。会社をつぶした責任をトップはとっていない。「おまえらこそ全員くびだ」と一度言ってみたい。
 (NEC三田・55歳以上・男)

★日本の労働組合運動全体について、組合幹部の保守化だと思う(今一番心配している)。解雇、リストラ、サービス残業、過労勤務(深夜までの勤務、土日出勤など)、未組織労働者の問題などたくさんあるが、組合が積極的に取り組んでいるとは思えない。上部団体も連合1つに統一されかえって悪くなったような感じです。
 (NEC三田・55歳以上・男)

★防衛庁事件が発生してから上部の方が責任を取らずに、経営難を社員に押し付けている反発はある。4月からの分社化で不安を感じている人が多い。また、月給の仕組みが変わるので、このことに対しても不安と不満がある。
 (NEC三田・50代前・女)

★特に変わった様子は(自分の目からは)見受けられない。自分たち若手社員の間では差し迫って受け止めはしないが、将来について考えると、がんばらねばと思う一方で不安もある。
 (NEC三田・20代後・男)

★リストラ等による社員削減の影響で、一人当たりの業務量が増加しているにも関わらず、残業規制がかかり、業務がこなせず、トラブルが発生するという悪循環です。構造改革できないものでしょうか。
 (NEC玉川・20代後・男)

★賃金を上げるか、物価を下げるか、税金を下げるか。賃金は下がるは、ボーナスは下がるは、生活が苦しくなっている。預金でカバーしているが老後が心配。

 (NEC玉川・40代後・男)

★分社化に伴い組合も分散化、人材派遣会社もできる等、組合の力も低減が予想され、我々組合員は非常に不安。

 (NEC玉川・40代前・男)

★人材派遣会社が12月1日付けで設立されたが、労働条件が決まらないうちに、出向が強制されている。

 (NEC玉川・50代前・男)

★バイタルスタフに出向に行った人達の労働条件悪化は絶対に反対します。

 (NEC玉川・40代後・女)

★「雇用か賃金か」という二者択一はおかしい。賃上げという働く者の共通の願いで、団結を強める事で、雇用を守って行く事ができる。それが労働者の原点だ。

 (NEC玉川・50代前・男)

★出向や転籍(転属)の際は充分な説明と話合いを行う事。

 (NEC玉川・55歳以上・男)

★裁量制で残業はサービス分が多い。休出するが今月より残業ゼロを会社が強力に進めているのでカウントせず。仕事量の割に人が2人しかおらず、手が回らず、ペンディングの山になっている。このような中、どの部門も技術力が低下していることが心配です。

 (NEC玉川・50代前・男)

★高齢者を派遣会社に追いやるリストラ反対

 (NEC玉川・55歳以上・女)




誰でも・どこでも15000円の賃上げを
     電機労働者懇談会の春闘提言

1.情勢の特徴
(1)日立、三菱の黒字転換など、電機の経営側は大手を中心にして「リストラ」により利益が回復しています。今後の見通しでも、電機産業は携帯電話、情報家電などIT革命の中軸として最も拡大が見込める分野にあります。各社はその中でいっそう独占的な利益をめざし、提携・合併・事業売却を進めています。さらには、金融や、介護ビジネスなど新たな分野への進出も激しくなっています。
(2)大企業の経営戦略と、労働者・国民との矛盾がいっそう激しくなっています。
 ・労務政策の基本は「総人件費削減」であり、
   正社員の削減、不安定雇用者への置き換えなど雇用の流動化を加速、
   成果主義賃金、業績連動型一時金など、賃金制度の改悪、
   企業年金を含め、企業内福利の徹底的な切り下げ、
   未払い賃金の増加、などが「この機に乗じて」進められています。
 ・労働者の生活破壊、中傷零細企業、下請けの切り捨ては消費を冷え込ませ、経済の回復を困難にしています。
 ・大企業の横暴、自自公政権の悪政に労働者・国民の怒りが広がっており、2000年春闘は、政治、経済の革新を求める大きなうねりの中で闘われています。

2.電機懇アンケートをもとに、闘う春闘をめざす
(1)要求では、
 ・アンケート結果は大幅な賃上げを求める声が圧倒的です。また、「雇用の流動化」で転籍などが増えたり、社内に不安定雇用者が拡大しており、「だれでも・どこでも月額15000円
」パート労働者などでは「時間額100円」を求めます。
 ・賃金水準を引き下げと労働強化をあおる、あらゆる賃金・一時金制度の改悪に反対し、わかりやすい賃金体系、最低賃金の引き上げを求めます。
 ・雇用の確保では、子会社化、出向・転籍などに反対するとともに、下請け労働者をはじめとする不安定雇用者の雇用と権利を守ること。
  「雇用延長」については、会社による選別をさせないこと、労働時間が変わらなければ賃金の引き下げは認めない、を基本に内容の充実を求めます。
  またサービス残業の絶滅、時間短縮を雇用の拡大の立場からも求めます。
(2)闘い方では
 ・労組としてやるべきことは、アンケートにも示されているとおり、組合員の声をしっかり聞いて要求をまとめて闘い、回答に不満な場合はストで闘うことです。
  ≪それを実現するために電機懇としては≫
 ・職場での対話活動を徹底的に強化し、職場集会など職場の労働組合運動の強化のために奮闘します
 ・「回答に不満な場合はストで闘う」という多数の回答を職場の世論へ。
 ・サービス残業や違法な派遣など労働法規違反の是正のために、実態を明らかにさせること、その是正のための取り組みを行います。
 ・年金問題について、政策提言を行います。時間短縮問題ではフランスの週35時間制など欧米の取り組みを宣伝します。
 ・春闘を企業内での交渉に閉じこめず、地域懇単位の交流集会を企画します。
 ・未組織労働者の生活と権利を守るために奮闘し、その労組結成を成功させる。
 ・3月の金属集会など広範な労組、労働者との交流・連帯を進めます。

 


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