NHKスペシャル 「1万人の配置転換・インターネットが巨大企業を変える」〜NEC密着ルポ放送(4/22)! NECの光と陰に迫る!


番組の概要
NEC職場からの感想
しんぶん赤旗(4月26日付)へ掲載された、番組を見たNEC労働者からのレポート


番組の概要

NECの「経営改革」の名のもと事業の主軸をインターネット事業へシフトする中で、強化される職場と切り捨てられる職場の実態を4人の労働者に焦点をあてて報道しています。

 人材公募で自ら希望してコンビニの情報端末開発の職場に移った労働者。インターネット事業の中核で希望をもって働き始めますが、成果目標設定で上司から厳しく指摘されとまどいます。光の当たる職場で成果重視に将来の不安をのぞかせます。

 NECの分身会社の労働者。NECの方針で医療機器の製造を他の分身会社へ移管し、電池事業へ移行するため、今の仕事を継続したいなら、遠い分身会社へ移籍。残るなら新しい仕事を一から覚えないといけない。という選択を迫られ、後者を選択した労働者の苦悩。

 1999年11月に設立されたNECバイタルスタッフ(株)へ不採算部門から出向させられた労働者の実態。この番組で最も深く訴求していた場面です。

 番組ではNEC本社(スーパータワー)で販売主任をしていたSさんとコンピュータ技術者で主任だったOさんが、バイタルスタッフへ出向し、新たな勤務先の国立倉庫で一日中慣れないパソコンの梱包作業に従事する姿に焦点を当てています。この出向で主任の肩書きを剥奪されます。

 Sさんは出向にあたって「これまでNECへ抱いていたイメージは人にやさしい企業だったが、今世間なみの企業に変わった」と胸の内を控えめに告白。

 Oさんは57歳でこの倉庫の最年長者で、みんなのまとめ役。

 「なれない仕事にとまどい、心身共に疲れ切っている」「みんなかなりくさっている。落ち込んでいる人も多い」とインタビューに答える。

 二人辞めたが補充はない。50歳すぎると、この仕事はきつい、
「ここで体壊したら、お前いらない!でおしまいだ」と職場の仲間から思わず本音がでてきます。

Oさんはみんなに

 あ あせらず

 お 落ち着いて

 い 急がず

 く くさらず

 ま 負けない心、前向きの心

 「あ・お・い・く・ま」は実在しないがこの心でがんばろうとみんなを励ます。

 しかし「寒い中でがんばっている姿を見ると泣きたくなる」と涙ながらに訴えていました。

 NECはこういうやり方で急速に人事異動を進めている結果、仕事を変わるのは当初計画の1万人をはるかに越える模様と報道。

 

 会社幹部の発言

 <成果主義について>

 「かがやく個人になれ」

 業務を短期的に見る。10年で1.6倍の収入格差も(人事部)

 目に見えるはっきりした成果を求められる。

 「常に緊迫感をもった人事構造を」(西垣社長)

 


NEC職場からの感想

Aさん:・バイタルスタッフの人が行った運輸の職場の前にいた人たちはどうなったんだろう。(首を切られたのか?)

    ・バイタルスタッフに出向を2倍に増やすといっていたが、今度はだれが対象になるのか?

    ・バイタルスタッフにいくと、2年間はボーナスを保証するが、二年はボーナスが減らされるといっていた。

    ・バイタルスタッフに行かされた人のことを考えるとつらい内容だった。

Bさん:中高年にとって厳しい世の中が来た。しかし人が大事にされないと・・・

Cさん:バイタルスタッフについては、けっこうインパクトがあった。

 この機会に中高年をリストラしていこうという意図がある。

 残業続きで2人やめた後、人員の補充がないと言われた時、「NECにいたときは、病気しても何とかなるが、ここでは体をこわしたらもうおしまい」との本音が出たところが考えさせられた。

 こんなところへ行かされたらだれでもくさってしまう。それは人間の仕事に対する誇りを奪われるから。人を生かすのが人にやさしい会社だ。

Dさん:バイタルスタッフに一番焦点をあてていた。「光」はインターネット(きれいごとだが)「陰」はバイタルスタッフ。岡部さんや佐野さんの怒り、無念が伝わってきた。

 また、佐野さんが「人にやさしい企業」から「世間並みに」そして「冷たい」と言いかけて「当たり前」といったことがつい本音が出たと思う。これから一層「成果を求める」と社長はいっていた。また史上最大の犠牲の上に新事業がつくられる。今は「光」の部署もいつ何時、「陰」になるかわからない。

 カンパニー制や分社化はそういうことができるということだ。

Eさん:早い話が、「脅し」ではないか、社内の人に対しては。    社外には、「こう経営改革をやっている」と見せる。そういう番組だったのでは?

Fさん:思い切った番組だった。しかし、社内の人にはショックをあたえて、リストラをすすめるものでは?   バイタルスタッフにいった人は、肩書きもとられて・・・   こんなひどいことが、個人のせいに還元されてしまう。赤字と時代の流れということで流され、諦めてしまう。これでいいのか?労働組合は何のためにあるのか。

Gさん:バイタルスタッフの吹きさらしの現場の後に、経営革新委員会の豪華な部屋が出てきたが、そのあまりの違いに怒りがわいた。この委員会の連中は、現場に行かされた人たちの思い、無念さを考えたことはあるのだろうか。バイタルスタッフでは、「あおいくま」といって、くさらず気分を切り替えて、仕事をしていこうと、岡部さんがみんなに呼びかけていたが、仕事する上では、これは仕方のないことだろう。

 しかし、こんなことがまかり通っては、NECもダメになると思う。人にやさしい会社への再生が必要。

 

Hさん:まさに「NECの光と陰 パート2」。インターネット事業へシフトする光の部分と、その裏で、切り捨てられる事業にいたばっかりに、リストラされ、バイタルスタッフへ。

 常にNECはおおきな事業転換の時には労働者犠牲の人事を行ってきた。その中でいくつかの労働争議が発生している。今回はこれまでの歴史を塗り替えるほど大規模な労働者攻撃を行って来ている。その一つが今回NHKが深く切り込んだバイタルスタッフという会社の設立だ。。今後も継続的に会社の都合で余剰にした中高年を追いやる場を設定したことで、労働者をいっそう不安定な状況に追いやっている。

 このことは、現在光の部分にいるインターネット関連事業で働いている労働者もインターネット事業が失敗した時点で、いつでも影の部分に追いやられることを意味し、落ち着いていい仕事ができないことはいうまでもない。

 NECにとって、まさにバイタルスタッフはNECのアキレス腱であると考える。

 


しんぶん赤旗(4月26日付)へ掲載された、番組を見たNEC労働者からのレポート

インターネット産業の「陰」の部分に迫る

NEC労働者 小倉幸雄(仮名)

 NHKが私たちの職場で取材を開始してから、NECの「経営改革」の名のもとでの大合理化をどんな視点で報道するか、職場の仲間とともに注目してきました。

 番組では、インターネット事業に経営資源を集中するという「経営改革」のもとで、1万人規模の配置転換が進められているNECの「光と陰」の部分を、4人の労働者の労働者を中心にすえてルポしています。

倉庫業務へ出向強いる

 Fさん(31)の場合は、インターネット事業強化のため必要な人材募集に応募し、自分の希望する職種への転換に成功した、会社側が提唱する「輝く個人」の少数ケースです。

 これとは対照的に、他のケースは過酷なもので、会社側の専横的な職場支配の一端をかいま見ることができました。

 本社で販売主任だったSさんやコンピュータ技術者として活躍してきたOさんなど、中高年労働者の配転のケースに最も注目しました。長年にわたって会社の成長を支えてきた下積みの労働者が、業績の好転が見込めないとして、労働条件の劣悪な倉庫業務を請け負う「新会社」へUターンのない出向が強いられたのです。

 この出向は、番組では触れられませんでしたが、多くの労働者が「減収なし」「高齢者もできる軽作業」と説得され、実際には配属後に、「ボーナスは減額」「昇給も減額」の事実を知らされたのです。残業のない職場では年収が百万円以上減ってしまう人もでています。

 また、実習中は下請け会社の指導員との共同作業でそれほどきつくはなかったのですが、配属と同時に下請けの指導員は解雇されて仕事量が倍加し、「会社にだまされた」という怒りが多くの職場で噴出しました。

働く仲間へ声援を送る

 SさんやOさんたちのように、これまでのデスクワークから、中高年とって立ち作業の多い倉庫業務への転換は、想像以上に大変なもので、「会社は早く辞めてほしくてこの会社に出向させたのだ。だから楽な仕事をさせるわけがない」とか、「これ以上自分たちのような犠牲を出さないでほしい」などの報道されなかった職場の生の声があります。

 やりきれなさやあきらめとたたかないながら、会社への怒りをのみ込んで、それでも必死に希望を見いだそうと励まし合っている働く仲間の姿に、私は大きな声援を送りました。

経営責任は触れぬまま

 番組では、昨年度の2000億円の赤字が、この「経営改革」の発端として解説していましたが、赤字の大半は多額の投資の末に解散に追い込まれた米パソコン会社の収束費用や、防衛庁「水増し請求」事件での国内売り上げの低下によるものであることなど、会社側の経営失態にまったく触れていなかったことに大きな不満が残りました。しかし、華やかに宣伝されているインターネット産業の「光」の部分の一方で、犠牲となった労働者という「陰」にも迫った貴重なリポートだという印象をもちました。


 

 


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