終わっていなかったNECフィールディングのリストラ

NECが主導、新会社へ400名の転籍狙う!


2005年8月14日 NEC労働者懇談会

 

 

 昨年9月30日の企業業績の大幅下方修正を理由にした大量リストラは、当初掲げていた早期退職と派遣新会社サポートクルーへの転籍合わせて450名の削減目標に対し、大幅未達の302名(社外向け発表)をもって終わったかに見えました(4月1日付社内発表は258名)。しかし、そう単純にはいかないようです。

あからさまなNECのリストラ介入

 今年3月25日のNEC予算会議で金杉社長は、フィールディングの富田社長に「来年度の内工化の目標は現状の倍(200→400人)やらなければダメだ」として更なるリストラを促しました。 これを受けて4月12日、富田社長は派遣新会社サポートクルー発足に当たりコメントを発表し、その中で「当面(2〜3年の間)は、親会社であるフィールディングから、人材を採用し、現在外部に委託している業務を競争力のある形(註、安い委託費と安い賃金の意味)で取込む」としてリストラの意思を明らかにしました。会社は、4月26日の2005年3月期決算発表で「派遣会社への転進支援は継続推進」するとして、「内工化促進(06年3月期:400名規模)・派遣新会社の要員増強」を打ち出しました。

目的は人件費削減、事業拡大はうそ

前回、面談の際にあれほどの強要を行ったにもかかわらず、わずか62名が応じたに過ぎないのに今回は倍近い400名の目標を掲げていることに対して、会社はどうやって実現しょうとするのか、会社にその自信はあるのか注目してきました。7月27日、会社は「平成17年度第1回特別人材公募実施の件」と題する通知を発表しました。その中で「同社への業務委託ニーズも拡大し、事業拡大に向けて人員を増強することと致しました。今回募集につきましては、通常の人材公募形式とし、対象者全員に対する面談は行いませんので、各自求人内容をご確認の上、ご応募いただきますようご案内申し上げます」として前回のようなことは行わないと公言し、先ずは167名募集するとしています。

○対象者   
 9月30日現在で45才以上の社員
○募集方法  人材公募宛に電子メールにて送信
○募集期間  7月27日(水)〜8月19日(金)
○募集職種  A職・B職・C職・M職(マネジメント職) 
○募集人員  M:3人、A:28人、B:72人、C:64人
○移籍日    10月1日(土)

 今回、特徴的なのは職種・勤務地・人員を特定して募集していることです。これらの目的や意味するものは何なのでしょう。 何気なく聞いていれば、会社がいうように「事業拡大に向けた募集」のように見えますが、外部から募集するのではなく、働くのはフィールディングの社員であり、働く職場も同じフィールディングであることからして100%人件費削減(転籍後の賃金は、C職で25万円 ・一時金は年間3ヶ月・退職金は慰労金レベル)のためであり、社員名はありませんが「転籍対象者」を特定していることは明らかです。 今回の応募者は、前回以下は勿論1桁ということも十分考えられます。そうなった時に、「肩たたき」が行われない保証は全くありません。そういう意味から監視が必要です。 

企業の「社会的責任」の放棄は明らか

前回同様に今回の募集にも、いろいろな問題点が見え隠れします。例を挙げれば、一つには対象年齢を特定していることです。二つには60才以上の再雇用制度の適用条件に「十分な意欲・スキル・知識を有すると会社が認めた人材について、業務がある限り60才以降の再雇用を行う」としていることです。前者については年齢差別を禁じたフィールディング企業行動憲章・行動規範に、後者については改正高年齢者雇用安定法にいずれも明確に違反しています。これは、CSR(企業の社会的責任)の放棄です。ちなみに高年齢者雇用安定法による雇用延長の義務は、大企業・中小を問わず経営者に課せられています。わざわざ転籍しなくても2006年4月以降60才を迎えた者については、本人が希望する限り適用されます。

7月28日、NEC金杉社長は、フィールディングの第1四半期の実績と第2四半期の見込みについて報告した富田社長に「事業体質としては、徹底的にスリムにして、展開の強みを活かすマネジメントをするよう」に発破をかけています。引き続き、第2回・第3回と募集という名のリストラが繰り返されることは明らかであり、警戒心を緩めることは禁物です。このほかの動きとして、3年間棚上げ状態になっていた扶養手当の見直し問題が、再び展開を見せてきました。廃止に伴う原資の使い方は、すでにNECで実施されている内容(生まれた子供への一時金やボーナスの成績分へ上積みなど)と何ら変わらず、いずれの動きも企業業績のV字回復へ向けた ものであることは間違いありません。

新会社の将来を暗示する出来事が

最後に、サポートクルーに未来があるのかどうかについて見ておく必要があります。今年度の売上規模として「約3億円」を見込んでいます。この数字を社員数で割ると1人当りの年間売上は440万円に過ぎません。これでは賃金を支払うのが精一杯で労働条件の改善の見込みどころか、企業経営さえもおぼつかない状況です。
 6月24日、同じような請負事業を行っているNECバイタルスタフでは、定年退職による社員数の大幅減少で主力事業の荷役業務の維持が困難となり、NECロジスティクスへの移管が明らかになりました。このことは、サポートクルーの将来を暗示しているといえます(現在の平均年齢52.6才)。バイタルスタフやサポートクルーは、いずれも大量リストラが行われた際に設立されたもので人減らしの手段・武器としての性格をもっている以上、まともな経営など期待できません。

 今後、フィールディングの職場で展開されることについての情報のご提供、ならびに困った出来事についてのご相談をNEC労働者懇談会へお寄せください。

    


 
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