これでは将来の生活設計ができない! ーNECの生活破壊施策ー

 電機業界でも最低・最悪! NECの雇用延長制度


NECはCSRをまじめに考えるのなら

生活でき、安心して働ける雇用延長を

2006年5月改定 NEC関連労働者ネットワーク

 

 2006年2月にNECの「雇用延長制度」の内容が確定した際、その「問題点」を解明し報告したが、4月からの実施以降、新たにさらに重要な問題点が明らかになり、雇用延長制度利用者が多大な被害をこうむる欠陥制度であることが、判明したので、「改定」版をここに発表する。  2月版との差分は赤字で記載している。
 読者の皆様におかれましては、利用者が「雇用延長してよかった」と思える制度へ見直しするための運動にぜひお力ぞえを賜りたい。

 
《NECの雇用延長制度のポイント》

■ 電機業界で最低・最悪の雇用延長制度

  ・56歳から20%年収削減
 ・60歳からは56歳到達時の40%の年収
 ・60歳からもフルタイム労働
 ・60歳以降自己都合で辞めたら20%の削減分は返ってこない
 ・選択は55歳時点のみ
 ・56歳で劣悪な職場に異動させられる可能性も
 ・定年延長の名を借りた人減らし「リストラ」

 

■ 制度は改定されたが、こんなひどい制度は選択できない。今後、見直してだれもが選択できる良い制度に変えていこう

 

   

 

 はじめに

 一昨年6月、改正「高年齢者雇用安定法」が成立したことにより、この4月から60歳以降の雇
用延長が義務化されることになりました。これは、年金法の改正で支払い開始年齢が段階的に引き上
げられたことで生じる収入の「空白期間」を埋める義務を企業に課すと共に、少子化による将来の労
働者不足に対応するものです(厚生年金の「定額部分」は2013年4月に最終の65歳へ引き上げ
られ、その後「報酬比例部分」は2025年4月に65歳へ引き上げられて完了となる。女性は5年
遅れ。その結果、1961年4月以降に生まれた男性は65歳になるまで厚生年金の支払いは一切な
い。従って定年など、まだまだ先と考えている人とてノンビリと構えてはいられない。)

 これに伴い、各企業において雇用延長制度の構築もしくは見直しが進められてきました。NECは昨年12月に制度を改定し、今年の1月にはNECフィールディングで導入、NECエレクトロニクスでも改定しました。しかし、率直に言ってNECグループ・関連の雇用延長制度は、電機業界でも最低・最悪水準であり、労働者の雇用延長の期待にこたえていないだけでなく、現在の雇用環境の悪さに便乗し、およそ考えられない低賃金と悪条件で労働者を働かせようとするものです。
 そして「年齢選択コース」を選んだ場合、56歳から劣悪な職場への異動も考慮されており、「雇用延長」の名を借りた人減らしリストラでもあります。

 


 

       図・1 逃げ水のように支給が先延ばしされる年金制度

 

 

1.NECの雇用延長制度の概要

 NECは「主任以下について、原則希望者全員を対象にして、現行の年齢選択コースの拡充により雇用延長を行う」として、ワークシステム検討委員会において「60歳以降の雇用延長制度」の見直しについて提案し、非常に短期間の労使の協議を経て、2006年4月から実施しました。(管理職も同等の制度を導入)

 

今回、以下の3つの雇用延長制度の中の「年齢選択コース」を改定。

(1)個別契約コース(60歳以降、仕事毎の市場賃金ベースで個別に1年毎雇用契約)
(2)年齢選択コース
(3)セカンドキャリアコース(58歳から社外求人による転進またはセカンドキャリア支援制度を利用した独立・転進

 

【従来の年齢選択コースの概要】

・56歳から「雇用延長コース社員」となり、賃金は選択時の月収の70%プラス一時金100%。

・60歳からは「選択年齢に応じた期間の雇用契約」となり、賃金は選択時月収の50%、一時金なし。

 

【今回改定された年齢選択コースの概要】(制度改定時期:2006年4月1日)

(1)対象者の基準と適用制度

 主任以下について、原則希望者全員を対象にして、現行の「年齢選択型コース」の拡充により雇用延長を行う。(管理職にも同等の制度を導入)
 対象者の基準については、「制度適用の確認時期(56歳到達時の半年前)において、会社が提示する労働条件および業務での雇用延長を希望する者で、次の各項目にすべて該当する者」としている。

   1)56歳到達時点における直近過去2回の人事考課が連続して最低評価でないこと(最低昇給額でないこと
2)勤務に支障がない健康状態にあること
3)能力開発休暇を取得していないこと

 

(2)雇用延長期間

  雇用延長期間は、厚生年金定額部分の至急開始年齢を勘案し、以下の通りとする。

   今年度到達年齢   雇用延長期間

   59歳       63歳到達まで

   58歳       64歳到達まで

   57歳       64歳到達まで

   56歳以下     65歳到達まで

 

(3)主な労働条件

 1)賃金

  ・56歳から60歳まで:56歳到達時点の月収の80%と80%の一時金(個人業績評価あり)(従って年収ベースでも56歳到達時の80%)

  ・60歳から65歳まで:56歳到達時点の月収の50%と60歳到達時の月収の1ヶ月の一時金(年間)相当分(個人業績評価により支給)(年収ベースでは56歳到達時の約40%)

 2)従業員区分:

  ・56歳から60歳まで:雇用延長社員

  ・60歳から65歳まで:雇用延長嘱託(再雇用を締結し、毎年更新)

 3)従事業務

   通常の人事異動による(会社が指定する業務に従事する)

 4)勤務取り扱いの決定

   原則として社員と同一とし、所定就業時間は7時間45分とする。(短時間勤務や隔日勤務は、「職場マネジメント上の負担も大きく、業務上の支障が生じる場合もあり、原則として実施しない」としている)

 5)その他の労働条件

  ・56歳から60歳まで:現行通り

  ・60歳から65歳まで:現行通り(現行の年齢選択コースにおける60歳以降の労働条件による)

 

(4)56歳以上、出向者の取り扱い

  1)今年度56歳以上の者への対応

    制度適用は2006年4月からで、条件は上記と同じ

  2)出向者の取り扱い

    55歳時点でグループ各社に出向中のものは、原則として出向先に移籍した上で雇用延長を行う。

 

 (5)雇用延長適用中に退職する場合の取り扱い

   1)会社都合時:従来通り

   2)死亡退職、傷病休職、介護休暇満了時

    以下の見舞金を支給する。

 ■60歳到達時までに退職する場合

56歳到達時月収の3ヶ月相当分×56歳以降退職までの経過年数

■60〜62歳までに退職する場合

61歳到達までに退職:56歳到達時月収の6ヶ月分相当

61〜62歳到達までに退職:56歳到達時月収の3ヶ月分相当

■62歳以降の退職:支給しない

 

2,他の電機メーカとの比較  ー最低・最悪条件のNEC

今回の雇用延長改定においてNECの労使は従来の制度と比べ同等か否かだけを論議し、NEC労組は「従来と同等以上」となったことを「評価」して会社提案を受け入れました。NECエレクトロニクス、NECフィールディングも職場から多く出されている疑問や不満に答えず、また議論も尽くさず非常に短期間で雇用延長制度を導入してしまいました。電機連合の中で多くの会社が雇用延長の制度の改定を検討している時に、他社との条件等の比較がまったく行われなかったことは不思議な話です。労組として制度改定を検討する場合、他社の優れた制度を参考にし、会社と交渉するのが当たり前のやり方ではないでしょうか。今回の雇用延長の改定は、他社の実態に目をつぶり、会社の言うがままに結論を急いだように見えます。というのは、以下に述べるようにNEC及びグループ、関連の雇用延長制度は電機メーカの中でも最低・最悪の条件だからです。NECエレクトロニクス、NECフィールディングもNECとほぼ同様かそれ以下の劣悪な条件です。

(1)選択時期

NECの選択時期は、55歳だけですが、富士電機は55歳到達・57歳到達・59歳到達年度の3ステップにて選択できます。日立、松下電器、富士通などは59歳が選択時期です。60歳まで、また60歳以降の労働については本人の健康状態や家族の介護など不確定要素が多いのに55歳時点だけでの選択は困難です。60歳ぎりぎりで選択できる制度が望ましいと考えます。

(2)56歳からの賃金

NECの56歳からの賃金は20%減額されますが、富士電機は60歳まで減額なしです。子どもの教育費や住宅ローンの返済で一番大変な時期に賃金を20%もカットするNECの制度は、労働者にとってはまさに死活問題です。

(3)60歳からの賃金

NECは56歳到達時点のたった40%程度。しかも56歳から60歳までの減額分を差し引くと、56歳到達時点の25%にすぎません。富士電機(会社に昨年12月提案)は59歳時点の60%であり、NECと比べると格段によい条件になっています。

(4)60歳からの勤務形態

NECは「嘱託」の身分なのに、それまでと同様に7.75時間フルタイムで働かされます。アルバイト並みの超低賃金でこれまでどおり目一杯働かせようという魂胆です。一方、富士電機は組合の要求で「短時間勤務」「少日数勤務」の新設が検討されています。


まだ、電機各社の雇用延長制度が出そろったわけではありませんが、これまでの中では、NECが一番劣悪な条件です。これが今後雇用延長の導入や改定を行う会社の労働者に悪影響を及ぼすことが予想されるため、NEC労使の責任はきわめて重大です。


 

3,NECのねらいと問題点 ーあまりにも多い問題点

NECの最大のねらいは、管理職の「56歳定年制」と同じく、中高年の人件費の削減です。また、「雇用延長」は「団塊の世代」がいっせいに退職して顕著になる「技術の空洞化」に対処するねらいもあります。

NECの「雇用延長」は60歳まで待たずに56歳から大幅な賃金ダウンと、「雇用延長」の美名のもと60歳からは更に低賃金で働かせるものです。まさに会社にとっては「一石二鳥」にも三鳥にもなるうまい制度ですが、労働者にとってはたまったものではありません。

「年齢選択型コース」では、図のように、56歳の時点の年収が670万円(月収41万円)の人(主任レベル)は、56歳から60歳までは年収538万円(20%減)、60歳からは年収270万円程度(月22万円)(56歳到達時の約40%)と新入社員並の給料になります。しかも56歳から60歳までの減額(「積み立て」ともいえる)分を差し引くと、年収は167万円、月収ではたった13万円、時給にすると930円程度で、アルバイト並みの超低賃金です。特に、担当・女性(B、C職給など)はさらに低賃金になり、最低賃金を下回るため、月収15万円を保障するとのこと。

さらに、60歳以降「自己都合」で退職した場合は、56歳から60歳までの減額(積み立て)分は戻ってこないため、丸損になります。死亡退職でもわずかの見舞金が出るだけです。(それも61歳までに死亡した場合)

その上、国から会社には、「継続雇用制度奨励金」が出ます。(労働者には職安に申請することにより「高年齢雇用継続給付(60歳以降の賃金の15%相当)」が支給されます。)

このように会社提案は、今後予想される物価上昇や税負担増の割合によっては、60歳以降は実質ただ働き同然になる可能性さえあります。

これでは、国の「雇用延長制度」の悪用であり、まるで詐欺行為ではありませんか。

 

この改定では、以下のような問題が発生します。

 1)住宅ローンや子どもの教育費などの一番かかる世代の賃金大幅ダウンは、生活できなくなり、生活設計が成り立たなくなる。晩婚化により子どもの教育費が一番かかる大学生の時、ちょうどこの時期(56歳以降)になる方が多いのではないでしょうか。

 2)雇用の不安定化により、今後の生活設計ができなくなる。

 3)60歳以降の賃金は新入社員並みの超低賃金であり、生活できない。

  会社は「年金や高齢者雇用継続給付金を合わせれば、60歳以降も56〜59歳とほぼ同等の年収水準となる」などといっていますが、これは1949年(昭和24年)生まれの人を対象にしているものであり、1961年(昭和36年)4月2日以降に生まれた人(男性の場合)は、厚生年金の基礎年金「定額部分」はもとより、「報酬比例」部分も65歳になるまでは支給されないため、本当に生活できなくなります。(その前に生まれた人も年金の報酬比例部分は支給開始年齢が遅らされる従って、収入は一時金を年金として受け取るわずかな部分等とこの超低賃金分だけになる)(図・1参照)

だいたい、国から出る高年齢雇用継続給付金や働かないでも支給される年金部分(賃金の後払い的なもの)を60歳以降の給料の一部のように見せかける会社のシミュレーションのやり方は労働者をばかにしたごまかしにすぎません。

4)56歳時の月収が41万円の場合、年金は毎年約3万円の減少

「国の年金」は60歳まで納入義務がありますので、56歳から賃金カットになると、年金の支給額が減少する影響が出ます。

   国の年金支給額は生涯年金ですから大きな影響がでます。

   ■賃金月額:41万円→32.8万円で、8.2万円x48ヶ月=393.6万円

   ■一時金:85万円→68万円で、17万円x8回=136万円

   で、529.6万円の賃金カットになり、この減額分が年金の支給に影響します。(年3万円程度減額となる)

5)56歳からVワークを外れ、いっそう減収に

A1職は、56歳前にVワークを外れるので、「雇用延長コース」の場合で55歳と56歳の賃金格差は、783.6万円から530万円へと253.6万円(32.4%)ものダウンになります。

   この賃金ダウンで、プラスのモチベーションを保てる人が何人いるでしょうか?

 6)せっかく雇用延長しても職場を変えさせられ、結果的に働けなくなる恐れがある

従事業務は「会社が指定する業務とする。ただし、業務上必要がある場合においては異動を命じることがある」としているため、劣悪な職場に異動させ、結局辞めざるを得ないように追い込まれる恐れがある。現に選択した時点から劣悪な職場を推薦された例がある。それも56歳から異動の可能性もあり、異動先が見つからない場合は、バイタルスタッフに異動もある。交代制や深夜など、劣悪な労働条件となる場合も。

7)賃金を大幅に削減し、雇用を不安定にすることにより、労働者のやる気をなくし、あるいは優秀な人材は先を見越してNECを去り、会社にとっても有害な施策

《職場の声》

 職場では、

雇用延長と聞いて、いい制度と思ったが、中身を知ってこれはひどい。とても使えない制度だとわかった

「今後年金ももらえなくなるため65歳まで働かなければ暮らしていけない弱みにつけ込んだ悪辣なやり方だ」

「中高年の就職が非常に厳しい状況だから、アルバイト並みでも会社にしがみついてくると見ているんだろう。会社はずるくて、せこすぎる」

「自己都合で辞めたら、60歳までの20%削減分がもどってこないなんて、まるで詐欺じゃないか」

「アルバイト並まで賃金を引き下げてなおかつフルタイムで働かせて、まじめに働く人がどれだけいるだろうか?」

「雇用延長を選択したら、きつい職場に異動させられてしまいそうで心配」

「組合は、会社の言うことばかり聞くんじゃなく、組合員の立場でがんばってほしい」

「他社より条件が悪すぎる。再度改訂して良くするしかないよ」

と制度改定への疑問や怒りの声が続出しています。

 

4,NEC関連労働者ネットワークの提案

  真の雇用延長へ今すぐ見直を

 現在の中高年層は「団塊の世代」として、会社の発展に貢献してきた世代です。今のNECがあるのもこの年齢層の身を削った労働があったためといっても過言ではありません。

この労働者にこのようなひどい仕打ちは絶対に許されません。また、このような劣悪な制度ではとても年齢選択コースの雇用延長を選択できないというのが多くの労働者の本音ではないでしょうか。他社に比べて最も劣るNECの雇用延長制度。激変緩和措置が終わる3年をかけ、みんなが選択できる良い制度に、力を合わせて変えていこうではありませんか。

NEC関連で働くみなさんに以下のことを提案します。

 

電機各社の中で最低・最悪のNECの雇用延長制度は、以下のように見直そう。

1)主任以下の雇用延長制度の選択は同業他社や管理職と同じ59歳に

  2)法律の精神に則って、希望者は全員に無条件で65歳まで雇用を延長する

3)60歳以降の賃金も国からの補助を賃金には含まず(本人に直接支給し)、生計費に   基づいた生活できる賃金とする

4)雇用延長選択後も本人の希望にそった職場で継続して働ける保証を

  
5)「2007年問題」を解決できる貴重な年代である中高年は会社にとっても、重要な  労働力です。その経験と技術力は会社にとっても貴重な財産です。


退職強要やその他の不利益扱いについては、NEC関連労働者ネットワーク、電機労働者懇談会、「電機ユニオン」などに相談し、会社と対等な立場でたたかい、生活と雇用を守ろう。

以 上

  

NEC関連労働者ネットワークのホームページ:

ELICNEC: http://www.elicnec.com/

 

 

 電機ユニオンの連絡先: TEL 03-3455-6006  FAX 03-3451-3595
       メール 
info@denki-union.org
           URL: http://denki-union.org/

 

 
前ページへ