就活はつらいよ! 中高年

定年後の再就職活動の経験談


奮闘記 求職活動で見えたものとは!
    年令が高くなればなるほど困難。 就ける仕事は、超安のマンション管理か警備

 一昨年春、私は20数年間働いたNECグル−プ会社をリタイアしました。その結果、申し分ない程の自由な時間を手にしましたが、収入はといえば、実に心細い年金があるだけで、これではとても生活することはかないません。失業保険も終わり、昨年になって本格的に求職活動を開始することにしました。

 川崎職業安定所に毎週のように歩いて通うと、30台程ある端末の多くは使用中で、それに向き合う人たちの年令はさまざま。50代以上の人はあまり多くはいません。後で判るのですが、そこにはちゃんとした理由がありました。端末の画面を覗くと、「職種」も「求人」も多く、地元神奈川と東京23区の情報も見ることができ、気になる求人年令は「不問」となっており、これでは職探しも簡単かと思いました。ためにじっくり選ぶことにし、気に入った求人を見つけては面接に出かけてみるのですが、なかなか採用とはなりません。その後、派遣会社の面接を相次いで受けに行って判ったことは、やはり企業は年令の高い者は取りたがらないという事実でした(面接担当者曰く、「私たちは、企業主にそういう人たちは経験も実績もあり即戦力になることを伝えるのですが、なかなか分かってはくれません」と)。

 みなさんは、「改正雇用対策法」という法律をご存じでしょうか。2001年10月1日に施行され、第7条で労働者の募集・採用について、労働者にその年令にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならないことがうたわれました。一見、良さそうにみえますが、義務化ではないため企業側に採用の意志がない場合でも、求人票の年令欄に「不問」という虚偽の記載がなされてしまうのです(注、年令制限が認められケ−スあり)。その結果、どういうことが起きるかといえば、期待して面接に行っても無駄足を食らうことになります。何とも馬鹿にした話しです。求職者に年齢の高い者が少ない理由がここにありました。

 4月に入り、横浜のセキュリティ機器会社の面接を受け、電話で不採用を報せてきた際に理由をただすと、年令にあることを簡単に認め、法律など知らぬといった態度に憤らないわけにはいきませんでした。即刻、川崎職業安定所の調査官に「改正雇用対策法」違反として苦情の申立てを行いました。その結果、高年令者雇用確保措置の導入の指導が行われ、その企業の求人票には、その旨の記載がなされるようになりました。

 後日、神奈川労働局に2007年4月10日から5月20日に横浜職業安定所が受付け処理した「求人内容に関する苦情連絡・処理票」の開示請求を行い、開示の決定を受けて20数件の文書を入手しました。そこから見えたものは、企業の労働者いじめの実態でした。
 

   「求人票」も偽装表示! 違う労働条件(賃金、雇用形態、加入保険など)

 開示された文書には、黒塗りされた箇所が何箇所もあったり、ひどいものはほとんどが塗りつぶされていました。
 職探しをする場合に必要なのが「求人票」ということになりますが、そこには賃金や雇用形態、労働時間、就労場所、加入保険の有無などの情報が記載されています。その内容を信用して面接に行くことになるのですが、実際には下記のような違った労働条件が提示され、働いても賃金が支払われなかったりしている実態が明らかになりました(泣き寝入りして働いている場合が数多く存在していることが充分想像されます)。


     月収が違う(歩合制や年俸制)            6件

     正社員ではなかった                 1件

     直接雇用でない(派遣や請負)            3件

     社会保険が未加入                  2件

     労働時間が違う(残業時間など)           2件

     就労場所が違う                   2件

     年令による拒否                   2件

     賃金の遅配や未払い                 5件


 面接時に何があったか、いくつか紹介します。「面接を受けたときの担当者の態度がガムを噛みながらの対応であった」「3日以内に退職した場合は給与を支払わないという契約を出された」「3月就労分については、引継ぎということで、無給でいいか」「面接時運転免許取得していないと伝えてあるにもかかわらず、免許なしで何故応募したのかといわれ、辞めさせられた」など。ここからも、利益のためには企業は偽装表示も、労働者をボロ雑巾のように扱うなど、何でもありの実態を見てとることができます。

  求人倍率、東京1.41 神奈川0.95 採用者は4人に1人

 昨年3月期の大手企業利益は過去最高を更新し、大学の新卒者の求人は引く手数多と伝えられています。しかしながら、求人倍率は決して高くはありません。厚生労働省が発表した12月の求人倍率は、東1.41、神奈川0.95、北海道0.61、沖縄0.42。
 先日、川崎職業安定所に月平均の採用割合を聞いたところ、県下で求人倍率が高い川崎であっても、26%程度だそうです。つまり、4人に1人しか職に就くことができないのが実態です。すでに団塊世代の大量退職も始まり、年金だけの生活に不安をもつのは私だけではないでしょう。高い年令者や若年者の求職も容易でないことは、職安の窓口に置いてある色刷りのチラシ「あなたの新しい働き方がきっと見つかる!!シニア・ジョブスタイル・かながわ」「若年者等トライアル雇用はあなたのチャンスを拡げます」からも知ることができます。

 この間、企業は年令制限を相当数行って高い年令者や30代以上のフリ−タ−といわれる人の雇用機会を著しく奪ってきました。昨年10月1日、新たな「改正雇用対策法」が施行され、年令制限の禁止が義務化されました。一歩前進ですが、罰則規定がないのは効果に疑問が残ります。

 セ−フティネットが脆弱な今の日本を変え、誰もが安心して生活できる社会を実現させるためには、職場であれ、地域であれ、声を上げていくことが大切です。そして、1日も早く、政治の流れを変えていくことが重要です。

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