疲弊する職場 NECは今  No.1

共通業務本部(上) 技術畑からゴミ回収へ                2005.1.6
 

 「やはり元の職場の同僚に働いているところを見られたくないですよ。みんなも同じ気持ちだと思います」と話すのは、首都圏にあるNECの事業場に勤務する五十代の男性社員です。
 同社員は、一年半前からゴミ回収の仕事に従事。各職場から排出される紙類や社員が飲み干した飲料のペットボトル、瓶、缶類を拾い集めるのが仕事です。
 「この年齢になって、ゴミ回収の仕事をするとは思ってもみなかった。家族を養っていかなければならない身ですから、辞めようにも辞められません。おかげで名刺がいらなくなりました」
 入社して三十年余。男性社員は長年技術畑を歩き、少し前まではソフト開発の仕事に従事。定年後も好きなパソコンを生かした仕事をしたい、と考えているほどの"デジタル人間"でした。

 ほとんどが50代

 それが三年前に一転。上司から「仕事がなくなったので、違う仕事をやってもらう」。配属先は、「共通業務本部」という名の新設された職場でした。あちこちの職場から約百五十人の社員が集められました。五十代がほとんどでした。

 長年慣れ親しんだ仕事を取り上げられ、ゴミ回収のほかに構内清掃、物流などの仕事をあてがわれました。男性社員の場合、ゴミ回収の前には物流の仕事で八カ月間トラック運転手をしたこともありました。
 元来これらの仕事は廃品回収業者や物流会社などに業務委託されているものです。男性社員らはその仕事の一部をもらい受け、食いぶちをつないでいるのです。
 上司が訓示することといえば、「けがをしないように」「元気にやるように」だけ。こんな仕事がいつまで続くのか、先ゆきは見えません。

「配転当初は腹が立った。誇りを奪い、辞めさせるのが目的なんでしょうが」と男性社員は悲しげな表情を見せます。
 これまで業者がやっていた草むしりや蛍光灯の交換を仕事とする同僚もいます。こうした境遇に耐え切れず、この間、半数近くが辞めたり、関連会社に移籍したりしました。精神に支障をきたし辞めていった四十代の男性、人間不信に陥り出社拒否している三十代の男性もいます。

 仕事への意欲を奪われ、誰もがぐったりとした様子で、昼休みになると、机にうつ伏せたり、土間に段ボールをしいて横になっています。

 賃金の減額も

 一昨年末、追い打ちをかけるように降格による賃金減額のルールが新たに設けられました。
 男性社員の場合、共通業務本部への配転と同時に、B職群2級」から最低ランクに近い「C職群6級」に降格されました。従来の賃金を保証するという約束で配転に応じた経緯があります。しかし、この約束は三年でほごにされました。
 賃金は四万円、一時金は五十万円の減額になります。緩和措置はあるものの、給料は一年ごと、一時金は
半期ごとに25%ずつ減額されます。

 「降格だけでなく賃金も容赦なく減額されます。これも成果主義賃金の一環です。リストラねらいのいじめ査定と一体となって進められ、社員間の格差拡大がいっそう進んでいます」と男性社員は話します。

     ◇

 いま職場は、危険信号が灯っているといわれます。仕事のがんばりを反映するというふれこみで成果主義賃金が導入されたものの、実際には賃金は抑制され、増えるのは仕事量ばかり。社員はむしろ働く意欲を 失い、疲弊している状況さえ見られます。相次ぐリストラで容赦ない社員の切り捨ても同時進行しているNECの職場の現状を連載でとりあげます。

                                                             (つづく) 
    ◇

 NEC :コンピューター
メーカーの国内大手。連結
売上高四兆九千六十八億円
(二〇〇三年度実績)。連
結従業員数は十四万三千人
、単独二万三千九百人(二
〇〇四年四月現在)。四年
前の二〇〇一年から本体従
業員を一万一千人減らし、
関連会社の従業員や非正規
従業員への置き換えが急速
に進んでいます。

 
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