疲弊する職場 NECは今  No.10

従業員犠牲の移転  単身赴任か片道2時間か            2005.1.19
 

 千葉県我孫子市にある日本電気(NEC)労働組合我孫子支部が昨年六月に実施した役員選挙--。「成果主義偏重でなく、温かい協働の職場づくりを」「人権無視の異動は許さない」と、成果主義やリストラ問題を唯一訴えた候補者に48.6%(五百二十一票)、実に二人に一人の組合員が投票しました。

 当選に至らなかったものの、職場の話題となりました。

 「私自身、この結果に驚いている」と話すのは、役員選挙に立候補した当事者の五十代の男性社員です。三百五十字の広報掲載文以外は全く選挙運動が禁止されているもとでの結果です。
 「誰が私に投票してくれたのかもよくわかりません。組合員の置かれている状況がそれだけきびしいということではないかと思います」

 配転拒否すると

 男性社員の働くコアネットワーク事業部は一昨年七月、神奈川県川崎市の玉川事業場から我孫子事業場に
事業部ごと移転となり、約三百人の社員は単身赴任や片道二時間以上かけての通勤を余儀なくされています。
 子育てなどで困難な社員を除き、全員が配転の対象でした。しかし、実際には全四百人のうち約百人が配転に応じないで、辞めていきました。

 「社員の犠牲をともなう移転です。配転に応じられない人のほかに、いったん我孫子にいく決心した人が一転、辞めるケースもありました。退職勧奨されたのではないかと推測しています」と同男性社員は話します。

 男性社員のほとんどは単身赴任、女性単身者も我孫子に転居、既婚女性は通勤といった選択をしています
。我孫子事業場まで三回乗り継ぎ二時間かけて通勤している川崎市在住の四十代の女性社員もその一人です。
 「家族そろっての夕食ができなくなりました。洗濯も朝から夜に切り替え、買い物も土、日曜にまとめ買いをするようになりました。料理も手の込んだものはつくれなくなりました」

 玉川事業場のときは朝八時に自宅を出れば十分でしたが、今は朝六時四十分に出ないと間に合いません。
定時でも帰宅時刻は午後七時三十分近くになります。

 事業再編による移転は社員に多大な犠牲を強い、配転を拒否すればリストラ対象者に組み入れられます。
実際に拒否し、玉川事業場に残る意思を示した社員数十人が仕事を取り上げられ、余剰人員扱いされる「企
画本部」という名の職場に配属させられました。

 社員をコマ扱い

 また、玉川事業場では昨年十月にプラズマディスプレー部門がパイオニアに売却されました。それにともない社員約千人がパイオニアへの移籍となり、給与は六万円下がりました。移籍を拒んだ社員は、NECグループ外の企業に出向先を探す研修を受けるキャリア開発プログラムへの応募を強いられました。

 「社員の生活のことは考慮されず、まるでコマのようにあちこちに振り回されています。いつどうなるかわからない、社員の多くはそんな不安でいっぱいです。会社への不満や不信が高まるのは当然のことです」と女性社員は話します。

                                                             (つづく)

 
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