疲弊する職場 NECは今  No.3

キャリア開発プログラム 机は残すが仕事はない            2005.1.8
 

 通称ロケットビルと呼ばれる超高層のNEC本社を間近に望める東京・港区芝浦。その一角にある六階建てのビル内にNECバイタルスタフという会社の一室があります。NECグループ会社の一つです。

 「余剰人員」としてNECを追われた社員がその一室でNECグループ外の企業へ出向先を探すための研修を受けています。この研修を「キャリア開発プラグラム」と呼んでいます。

 この事業がNEC人事部と共同で始まったのは一昨年七月から。およそ三カ月のサイクルで社員数十人が送り込まれます。多くは五十代の社員ですが、若い世代も少なくないといいます。

 「必要ない」人材

 事務部門の四十代後半の男性社員もその一人。上司から、「社員の効率化を図るため、人員を削減している。こういうプログラムがあるから参加してみないか」といわれ、キャリア開発プログラムに応募しました。 部長はその前にこういいました。「君の仕事は会社の方針に合わない、スキルに欠けている。この部にあまり必要のない人材だから、むしろこういう所に行った方がいいのではないか」と。

 職場で同じように声をかけられた同僚は自分を含め数人いました。五十代がほとんどで、四十代もいました。マネジャー(課長相当)、主任クラスが対象者でした。

 「私は最初、断わるつもりだったんです。ところが、次の面談のとき、すでに私がいないことを前提に仕事が組まれていました。ショックでした。本人の同意なんてなきに等しいものです。一番気になったのは、給料がどうなるかでした」と男性社員はいいます。

 他の部門では、「申し出を断わったらどうなるのか」と問い返したところ、部長が「机は残すが、仕事はないよ」といい放ったといいます。

 キャリア開発プログラムに参加した時点で、先の男性社員の場合、資格は「A職群1級」の主任職から最低ランクの「B職群5級相当」に格下げになりました。
 給料はそれにともない最大四万円の減額。緩和措置で一年目は百%保証されるものの、それ以降、毎年八千円ずつ減額されます。一時金は、査定期間中の出勤率が百%で成績が標準の人は、支給 月収の八〇%が保証されるといいます。しかし、成績次第ではどうなるかわかりません。

 NECバイタルスタフでの研修は出向のための準備期間。「自分に何ができるか」「どんな仕事をしたいのか」などを自分自身で明らかにし、面接の受け方や履歴書の書き方も同時に学ぶというものです。次のステップでは、外部の再就職支援会社のもとで具体的に出向先を探します。

 墓の販売会社へ

 出向先が決まった時点で、出向先の担当業務内容に応じて資格区分が再度見直され、それ以降、どういう
処遇になるかは定かではありません。本人が希望すれば転籍も可能としています。
 NECバイタルスタフへの出向体験をもつ元NEC社員はいいます。
 「同僚で、お墓のセールス会社に転籍した人がいました。しかし、あまりにも忙しくてその後辞めたようです。不況下で自分に合った就職先を探すのは大変です」

                                                             (つづく)

 
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