東京・港区のNEC本社ビル周辺に集中するNEC関連ビル。このビル群も午前零時はおろか二時、三時にならないと明かりは落ちません。
「夜中までがんばっても、賃金は上がらない。ばかみたいな話です」。そのビル群の職場で働く男性社員は、導入されている成果主義賃金についてそう話します。
一時金の半減も
所属する事業部の利益が上がらなければ、賃金は上がるどころか、下がります。しかも一時金は、主任クラスの場合、「個人成果」配分が六割を占め、成果がゼロと査定されれば一時金は半額以下になります。
「抑えられた総人件費の奪い合いをさせ、利益を上げろと増収にかりたてる。裁量労働制の導入とあいまって夜十時、十一時まで働くのは当たり前になっています」と男性社員はいいます。
一時金は、「基本分」「等級別加算」「個人業績分」から成り立っています。基本分は連結営業利益額で決定され、等級別加算は基本分と等級別乗率をかけ合わせたもの、個人業績分は連結営業利益によって標準額が定められ、それを基準に決定されます。
このように一時金は営業利益と資格等級に左右され、それ以上に影響が大きいのが個人業績分。個人業績は上司がSABCDの五段階に評価した上で、与えられた原資総額の中で、それぞれの金額が決められます。
会社側の説明によると、同じ職群・資格で同じ評価をされても支給額を変えることが可能としています。また、支給額の割り振りには制限を設けておらず、個人業績分がゼロ円の人もいます。会社側の裁量一つでいかようにでもなるのが成果主義賃金なのです。
たとえば十人の職場で個人業績分の総額原資は八百万円(一人当たり八十万円)とします。このケースの場合、原則的にゼロ--百六十万円の範囲でそれぞれの金額が決定されます。八十万円が平均的な評価で、最高は百六十万円、最低はゼロ円となります。
「定期昇給をなくした給与の場合、三十五歳くらいまでは比較的昇給しますが、それ以降は頭打ちです。三十歳半ばまでに主任、マネジャーと出世階段を上る一部の人を除き、大幅な昇給は望めません。それが成果主義です。中高年はどんなにがんばってもせいぜい数百円程度のアップ」と男性社員はいいます。
退職金にも導入
一昨年八月には、「退職金ポイント制」が導入されました。これは社員の役割や等級、年二回の一時金の業績評価によって点数化(ポイント化)し、その累計ポイント数に応じた金額を退職金、あるいは退職金と年金の組み合わせで支給するというものです。
勤続年数は加味しておらず、いわば退職金の成果主義化です。
NECは、赤字を理由に二〇〇二年、二〇〇三年と二年連続にわたり社員の一時金を大幅にカットしまし
た。とくに管理職層や中高年の場合、三割のカットもめずらしくありませんでした。
「大幅にカットされた一時金の業績評価を退職金に連動させるため、退職金の大幅な減額は避けられません。ポイント制に移行する寸前に、全社で六百人の社員が職場を辞めていきました。成果主義が何を目的にしているか、社員の多くは見抜いています」と男性社員は話します。
(つづく)
|