すでにこれまでの連載で紹介したように、NECが「共通業務本部」に約百五十人もの社員を送り込んだり、「キャリア開発プログラム」に三カ月サイクルで毎回数十人を送り込んでいるのは、リストラの新しいやり方として、企業の身勝手さを示すものです。
出向か退職かと
NECは、国際的な産業再編成の一環として不採算部門の撤退や事業の縮小再編で職場がなくなった社員に出向するか退職するかの選択を迫っています。拒否すれば、「残っても仕事はない」といわれ、NECグループ外への出向準備のための研修制度である「キャリア開発プログラム」に送り込むシステムです。
成果主義のもとで、会社の恣意(しい)的な評価で業績が上がらないとされた管理職も容赦ないリストラにさらされています。「むしろ管理職の方がきびしい」と社員たちはいいます。「キャリア開発プログラム」への応募を強制された産休明けの若い女性社員もいました。
リストラ要員のために設けられた「共通業務本部」や、「キャリア開発プログラム」に職場で怒りが広がっています。
こうしたリストラと並行して、NECは正規社員を派遣社員など非正規社員への置き換えを急速にすすめています。
NECは、ME(極微小電子工学)化、コンピューター制御システムの導入と結合して、この三年間でNEC本体の従業員を三万四千八百人(二〇〇一年三月)から二万三千五百十人(二〇〇四年三月)へと一万一千人余も減らしています。
本社と五事業場の人員構成をみると、現在では本体の従業員は40%ほどで、半数以上が関連会社や協力会社の従業員で成り立っています。神奈川県川崎市にある玉川事業場の場合、NEC本体以外の従業員が実に九割を占めます。
相次ぐリストラと人件費の削減など徹底した利潤追求によってV字回復を果たし、二千億円も内部留保を積み増し、二〇〇四年三月期決算では連結営業利益は千八百億円余にのぼっています。
心身を病む社員
リストラで出向を強いられている社員らは、一様にこう話します。
「NECに雇用され何十年も働いてきた身であれば、そこで最後まで働きたいと思うのは当然のことです。仕事や職場を確保するのは会社の社会的責任だと思う」
リストラで人員が減らされ、残された社員はいっそうの長時間労働と割増賃金を支払わないサービス残業(ただ働き)が押しつけられています。
職場では、長時間労働とストレスの増大で、心身を病む社員が急増しています。一方、無謀なリストラは、会社にも甚大な悪影響を及ぼしています。とりわけ高い技術をもつベテラン労働者の多くを退職に追いやり、技術の継承を困難にしています。不良品の多発にもつながっています。
これらの実態について、引き続き連載で取り上げていきます。
(つづく) |