疲弊する職場 NECは今  No.7

泥沼プロジェクト  技術の継承、困難になった          2005.1.15
 

 「泥沼プロジェクト」。聞き慣れないプロジェクトがNEC内部で深刻な問題となっています。ソリューション事業のトラブルだらけのプロジェクトをそう呼んでいるらしいのです。

 ソリューション部門で働く男性社員は「この数年、本番を予定通り迎えられない、失敗するプロジェクトが多発している」と話します。

 行き詰る事業

 ソリューション事業とは、情報技術(IT)を利用して、企業や役所の業務改善や経営課題解決のためのシステム構築やビジネスモデルを提供するサービスをいいます。NECの主力事業で、大きいものでは一件十数億円というそのプロジェクトの何割かが行き詰まっているというのですから、深刻です。

 こうした事態に陥った背景について、プロジェクト担当の男性社員は、こう指摘します。

 「リストラによる人減らしで、以前のような製品開発と一体となったものづくりの機会が大幅に減ってきています。技術の原理原則をマスターしている人材も少なくなり、技術の継承も困難になっています。その結果、わからないまま見切り発車するシステムが増えているのです」

 ハードもソフトも自社製品でまかなう方式から海外のモジュール(部品)を買い、それを組み合わせるオープンシステムに切り替わりました。グローバル経済のもとでの価格競争がその背景にあります。今では自社製の中核的なソフトはほとんどありません。

 「自社開発から手を引き、海外製品を組み合わせるだけの仕事になっています。トラブルが発生しても自社製品ならその原因を突きとめることが可能ですが、他社製品、しかも日進月歩する製品はブラックボックス化し、手に負えなくなっているのです」と別の男性社員が指摘します。

 さらにこう続けます。「リストラでベテラン社員を追い出し、その代替として派遣や請負労働者が激増しています。それが技術の継承をより困難にし、体制の弱体化を招いています。自社製品の比率を高め、若い社員の能力を高めることが必要になっています」

 残業、つき100時間超

 成果主義はプロジェクトの運営にも無視できない影響を及ぼしています。社員が目先の成果を追い求めるとにきゅうきゅうとし、技術の蓄積がないがしろにされ、プロジェクトに必要なチームワークを失わせているのです。他のプロジェクトが失敗すると、「ざまあみろ」と喜ぶ社員も見受けられるといいます。

 「同僚をけ落として成り立つ成果主義はプロジェクトには合いません。会社はそこに早く気づくべきです」と社員らは口をそろえます。

 トラブルの続発は長時間労働を増加させています。その対応に追われ、残業が月百時間を超えるプロジェクト担当者はめずらしくありません。疲れ果てて帰宅するのが面倒くさくなり、事務机の上で毛布にくるまって夜を明かす社員は少なくない、といいます。

                                                             (つづく)

 
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