「早期退職優遇制度」とは? ・・・かつてNECで行われた「転進支援制度」のことです。
概要 ・・・ 退職を希望する社員に対し、最大で月収の34ヶ月分を加算金として支給する。
対象者 ・・・ 2008年3月末時点で満40歳に達する全NECエレクトロニクスグループ社員。
募集期間・・・ 2008年2月18日〜2月29日
退職日 ・・・ 2008年3月30日
面接 ・・・ 制度の説明と、使用に関する意思確認のため面接(個別ヒアリング)を実施する。
面接実施期間:2008年1月15日〜2008年2月中
その他 ・・・ キャリア相談室を設置し、個別のキャリア相談に応じる。
外部コンサルタント会社による再就職支援サービスを提供する。
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(1) はじめに
これは2000年代におけるNECの3大リストラです。
NECでは2001年に大リストラを実行し、多くの退職者を出しました。このとき、「特別転進支援施策」と言う名の首切り施策が猛威をふるいました。3年後の2004年、今度は子会社のNECフィールディングにおいて本施策が展開され、やはりあちこちの職場で退職の強要が行われたと言います。そしてそれから3年経ったいま、中身の同じ制度が「早期退職優遇制度」と名前を変え、適用年齢を40歳に引き下げつつ、舞台をNECエレクトロニクスグループに移して、三たび導入されます。
NECエレクトロニクスは、確かに過去2年あまり赤字に苦しんで来ました。そこで、約1年前に中島新社長のもとに構造改革を断行し、そのリストラへの協力と称し、我々労働者側も、ボーナスは4.0ヶ月の最低水準に(NECグループ業績連動は4.48ヶ月のため、約12%カットに相当)、そして昇給は半年先送りと言う厳しい措置を受けました。その結果、今年の上期には久々の黒字を達成できたことで、ようやく明るいムードが出始めていた矢先でした。去る11月28日に新たなリストラの発表があり、いま職場には暗雲が垂れ込めています。
では、この早期退職優遇制度によって何が起きるのでしょうか。ちょっと一緒に考えてみませんか。
(2) 問題点
心配される大量の退職者
もっとも心配されているのが、社員の大量退職です。確かに労働組合は、今回の制度を導入するにあたって、「本人が希望しないのに退職するケースが一切発生しないこと」を会社に確約させています。しかし過去の実績を見るにつけ、事は予断を許さないとわかります。会社の約束したとおり、退職への誘導は本当に行われないのでしょうか。
@なぜまた個人面接を?
過去のリストラでは、いずれも面接の席で上司から退職の強要が行われたと言います。
そして今回も、キャリア設計にかこつけて、しっかり個人面接が実施されつつあります。会社はわざわざ「個別ヒアリング」と言っていますが、ストレートに「面接」と言わないところに怪しい意図を感じざるを得ません。
A相模原の製造現場で働く社員は?地方の生産基地は?
一番不安なのは、将来も自分の働く場所があるかどうかが判らない場合でしょう。相模原事業場の試作ラインの閉鎖およびNEC山形(山形県鶴岡市)移転により、相模原の製造現場で働く従業員は、同じ仕事を維持するのが難しくなります。約300名が地方日電であるNEC山形へ異動する予定と言われています。では山形に行けない人はどうなるのでしょう?
あるいは仮に全員行けたとしても、果たしてNEC山形に300人分の仕事があるのでしょうか。
地方の生産基地も心配です。NEC九州やNEC関西の統合によって、スタッフ部門などが合理化と称して縮小されないとも限りません。
Bチェック機能は働くの?
個人面接と言う密室で何が行われるのか、正確には当事者しか知りません。密室化を避ける対策、たとえば「集団での説明会にする」、「希望者のみが面接を受ける」、あるいは「面接に立会い人を設置する」などは、残念ながら過去同様に今回も実現しませんでした。だから何かまずい事が起きていても、本人が訴えない限り、周りの人は気づかないでしょう。
(3)NEC&関連労働者ネットワークの見解
本来は必要ない制度です。
@何のための制度?
今回の制度は、あくまで本人の自発的意思に基づいた退職のために、つまり積極的に退社して他社などに転進したい人が、当座の保障を得るために実施される制度と言うことになっています。したがって働き続けたい人が退職に追い込まれるための制度ではない事が原則です。
一般にこのような制度を設けると、「優秀な社員が離反するだけ」と言われます。しかし今回は、発表から募集期間までが短いことから、仮に引く手あまたの優秀な社員といえども、容易には転職先を見つけられないでしょう。つまり、積極的にこの制度を利用したいという社員はほとんど居ないだろうということです。
と言う事は、この制度がまともに機能する限り、利用者は非常に少ないはずで、むしろ制度導入に関わるコストの方が高くつかないとも限りません。つまりは不要な制度と言えるでしょう。
A「再就職支援サービス」に会社のホンネが見え隠れ。
再就職支援サービスを申し込むと、外部のコンサルタント会社が、再就職を手助けしてくれるそうです。でも、中高年の転職が絶望的に厳しいいま(※)、どうして再就職先も決まっていない人が「自ら進んで」辞めないといけなないのでしょう
か?
結局会社は、何らかの事情で辞めざるを得ない方向へ誘導しようとしているのだと疑った方が良さそうです。
※NECフィールディング・管理職の体験談「辞めるな、キケン!」
再就職活動の体験談「中高年の就職活動はつらいよ!」 を参考にしてください。
B会社は雇用の確保にこそ全力を尽くすべし。
会社にとって雇用の確保は、CSRの中核たるべき要件です。
他社への移籍、遠地への配転を行う以上、いまの職場を失う人や、家庭の事情などで異動出来ない人、そしてまた異動したくない人に対しても、最大限の配慮がなされなくてはいけません。(※) 会社が通年で黒字になろうとしている現在であれば、なおさらです。もし仮に会社の配慮が足りない事が原因で、「この会社で働ける場所がなくなりそうだから、せめて割増金を貰って退職をしよう」と思い、不本意ながらもこの制度を利用してしまう社員が現れれば、NECエレクトロニクス社設立後わずか5年にして、早くも大きな汚点を残すことに
なります。
必要なのは働ける職場の確保です。社員を退職させることではありません。
※これに関する法律的根拠は、「知って役立つ法律」をご覧ください。
(4)対策
労使間の約束を徹底し、雇用の確保を実現しましょう。
過去の2回(2001年のNEC、2004年のNECフィールディング)では、いずれも退職勧奨が実行されるという不幸な結果となりました。しかし今度こそは、本人の意思に反した退職が絶対に行われないように、力を合わせてリストラを跳ね返しましょう。
@面接では、はっきり意思を伝えましょう。
あなたが会社を辞めるつもりが無いのなら、はっきりそう言いましょう。あいまいな返事は避けることです。あなたが働きたいと言う限り、会社はあなたを解雇できません。退職や転職の勧めにはきっぱり「ノー」と言い、キャリア相談室の利用を勧められたら、「私には必要ありません」と言いましょう。
それから、きちんと記録を取る事は、攻撃をかわす盾にもなります。面談者に見えるようにしっかりメモを取りましょう。ボイスレコーダー(出来るだけ大きなもの)を持ち込み、面談者との間に置いて録音すると言うのも良い方法です。
企業サイドの退職強要マニュアルはこちら。会社の手の内がわかります。
A労働組合に相談しましょう。
繰り返しますが、今回の制度を労働組合員に適用するにあたり、NECEL労組は会社に対して、本人が望まない退職は決してさせないことを確約させました。そこで、これに反して退職させられそうだと言う人はもちろんのこと、「本当は辞めたくないけれど、働く場所が無いかも知れない」とか、あるいは「働き続ける自身が無くなった」など、ネガティブな感情からこの制度の利用を考えた人、「個別ヒアリング」の範囲を超えて不快な質問をされた人、そしてそういう人を知っている人も、職場委員などを通じて、労働組合へ相談を持ちかけましょう。また、今回労働組合は、ヘルプラインを開設したと組合員に通知しています。是非とも利用したいものです。
では管理職の方は?・・・「NEC&関連労働者ネットワーク」にご相談ください。
「電機ユニオン」のように、管理職が個人加盟できる団体の紹介などを通じ、具体的な対処方法について一緒に考えさせていただきます。
B一人にしない、ならないこと。
面談での様子や、何を言われてどう思ったかなど、出来るだけオープンにして、職場の仲間と情報を共有しましょう。組合のヘルプラインを利用された方も、「こんな相談をした」「こんな回答があった」など、どんどん周囲に情報を流しましょう。
誰でも自信を失っているときは、つい周囲の人から離れて孤立しがちです。お互い声をかけあいましょう。もし周囲に相談できる相手がいないと感じたら、どうぞ「NEC&関連労働者ネットワーク」にご連絡をお願いします。「NECエレクト
ロニクス リストラ対策ページ」のリストラ110番で受け付けています。また「リストラ掲示板」を通じてメッセージをお寄せいただければ幸いです。
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